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「年を取ると記憶力が落ちる」という固定観念で本当に落ちる

南カリフォルニア大学の研究グループによると、老いに対する固定観念が、高齢者の記憶力が衰える原因となることがあります。

何かを思い出せないたびに「年を取ったから思い出せないのだ」と年のせいにしていると、それが原因で記憶力が実際に悪化しかねないというのです。

この研究では、59~79歳の中高齢者に参加してもらって2つの実験を行って、高齢者における「ステレオタイプ(固定観念)脅威」の効果を調べました。
ステレオタイプ脅威

「ステレオタイプ脅威」とは心理学の概念で、特定のイメージが定着している集団に属している人が、その集団のイメージが足かせとなって、本来の自分の能力を最大限に発揮できなくなる現象のことです。

例えば、「日本人は体質的に100メートル走に向いていない」という固定観念のせいで、100m走における日本人選手の成績が、そのような固定観念が存在しない本来の成績よりも悪くなっているというのが「ステレオタイプ脅威」です。 (100m走の話は、あくまでも例え話で、現実にどうなのかは知りません)
1つ目の実験

1つ目の実験では、参加者を2つのグループに分けて、一方のグループ(以下、「固定観念グループ」)には加齢と記憶力減衰との関係について論じた複数の論文を読んでもらい、もう一方のグループ(以下、「無垢グループ」)には記憶力とは無関係の話を読んでもらいました。 そして両グループに記憶力テストを受けてもらったところ、固定観念グループのほうが成績が悪いという結果になりました。

2つ目の実験

2つ目の実験では、まず、固定観念グループと無垢グループのそれぞれをさらに、飴グループと鞭グループの2つに分けました。 つまり、この時点では4つのグループ(①固定観念・飴グループ、②固定観念・鞭グループ、③無垢・飴グループ、④無垢・鞭グループ)が存在しています。

そして、飴グループ(①と③)には単語を1つ暗記するたびに現金を与え、鞭グループ(②と④)には単語を1つ忘れるたびに現金を支払わせました。

その結果、①固定観念・飴グループと③無垢・飴グループとの比較では、①のグループの成績が②のグループよりも20%ほど悪かったのですが、②固定観念・鞭グループと④無垢・鞭グループの比較では、②のグループの方が、④のグループよりも良い成績だったのです。

研究グループは、②が④よりも良い成績であった理由として、加齢と記憶力減衰に関する話を読んで、「老齢のために自分の記憶力が落ちているかもしれない」と思った②のグループの人たちのモチベーションと集中力が上昇したために、このような結果になったのだと考えています。

研究者は次のように述べています:
「ステレオタイプ脅威は(当該の集団のイメージが否定的なものであれば)負の側面が強く、今回の研究でもステレオタイプ脅威によって中高齢者の記憶力が落ちていましたが、2つ目の実験では、損失を回避するという目的においては、ステレオタイプ脅威がプラスの方向にも作用し得ることが示されました」