(2017年10月) "Scientific Reports" に掲載された国立がん研究センター(日本)などの研究で、男性に限り精神的ストレスを強く感じている人はガンのリスクが高いという結果になりました。
研究の方法
40~69才の男女10万人超のガンの発生状況を平均17.8年間にわたり追跡調査しました。 精神的ストレスに関するアンケート調査は、追跡開始時のほか追跡開始から5年目および10年目に行いました。
ストレスに関する質問
この研究では次の1つの質問だけでストレスの程度を尋ねました:
あなたは普段の生活でどの程度のストレスを感じていますか?
回答の選択肢は「少しだけ(ストレスが少ない)」・「人並み(ストレスが中程度)」・「たくさん(ストレスが強い)」の3つでした。
結果
追跡期間中に1万7千件超のガンが発生しました。
一時点の分析
追跡開始時のストレスの強さとガンになるリスクとの間には関係が見られませんでした。
ストレスの変化
追跡開始時および追跡開始から5年目に尋ねたストレスの動的な量(*)とガンのリスクとの関係を分析すると、ストレスが少ないグループに比べてストレスが中程度~強いグループでは、ガンになるリスクが4~6%増加していました。
性別に分析すると、リスクが増加していたのは男性だけで女性では増加していませんでした。 男性におけるリスク増加幅は、ストレスが中程度のグループで7%、ストレスが強いグループで10%でした。長期的なストレス
3回にわたるアンケートの全てに回答した7万9千人超のデータを用いて、長期的なストレスとガンになるリスクの関係を分析したところ、追跡期間中に一貫してストレスが低かったグループに比べて、追跡期間中に一貫してストレスが高かったグループはガンになるリスクが11%高くなっていました。
性別に分析するとリスクが増加していたのは男性だけで、増加幅は19%でした。 男性に限ると、当初のストレスが少ないあるいは中程度で後にストレスが強くなったグループでも、追跡期間中に一貫してストレスが低かったグループに比べて、ガンになるリスクが20%増加していました。
解説
研究チームによると、ストレスが強い場合にガンのリスクが増加していたのが男性だけであった理由として次の2つが考えられます:- 男性と女性とでは生活習慣が異なるうえ、男性のほうが女性よりもストレス解消のために飲酒や喫煙の習慣に頼りやすい。 今回の研究でも、ストレスとガンのリスク増加との関係は喫煙や飲酒の習慣がある人や肥満者で顕著だった。
- 女性よりも男性のほうが心理的ストレスの肉体への影響が強く現れるという可能性も考えられる。