小さな手術ならアスピリンやワルファリンの服用を継続できる

(2013年5月) 脳卒中の発作や小発作が生じた患者の多くは、アスピリンやワルファリンなどの血液希釈剤を服用して脳卒中の原因となりかねない血栓のリスクを下げます。 ところが、この血液希釈剤が、外科手術を受ける際には問題となります。 血液希釈剤によって出血のリスクが増加するためです。

この点に関して、米国神経学会が "Neurology" 誌に発表した新ガイドラインでは、歯の外科手術や、白内障手術、皮膚の手術などのような小規模な手術であれば、血液希釈剤を服用していても安全である可能性が高いとされています。

この提言は133の研究に基づいています。 提言の根拠となった研究結果は次の通り:
  • 歯科手術の前にアスピリンまたはワルファリンを服用していても、出血リスクが増加しない可能性が高い。
  • アスピリンによって、白内障手術や、皮膚の手術、前立腺生検、手根管症候群の手術などにおける出血リスクは増加しない可能性が高い。 ワルファリンについても同様に、皮膚の手術や、侵害的な眼の麻酔(invasive ocular anesthesia)における出血リスクが増加しない可能性が高い。
  • アスピリンではおそらく、網膜手術や超音波ガイド下生検などにおける出血リスクを増加させないと思われる。
  • ただし、股関節手術(orthopaedic hip procedures)においては、アスピリンで出血リスクが増加する可能性が高い。
ガイドラインでは、仮想の症例を用いて、この提言の適用例を描写しています:
  • 1年前に脳卒中を起こした65歳の男性が大腸内視鏡検査を受ける場合。大腸内視鏡検査の際にポリープの切除をする必要が無さそうで、さらにポリープを切除するにしても出血の確率が2%に留まるのであれば、アスピリンの服用を続けても問題がない。
  • 過去に脳卒中を起こしたことのある70歳の乳ガン患者が乳房切除手術を受ける場合。 このように侵害的な手術の前にアスピリンを服用する場合の出血リスクに関する研究がほとんど存在しないため、念のために、手術の7日前からアスピリンの服用を停止し、手術の翌日に服用を再開する。
  • 脳卒中を起こしたことのある60歳の男性が、白内障の手術を受ける場合。 神経科医が当ガイドラインを参照した結果、眼科の手術の際にワルファリンを服用していても安全であるとは言い切れないことがわかった。 しかしながら、脳卒中の発症リスクと手術中の出血リスクを秤(はかり)にかけた結果、神経科医は、眼科医および患者と相談したのち、白内障手術の際にもワルファリンの服用を継続することを決定した。