(2018年5月) "Psychology and Aging" 誌に掲載されたテキサス大学ダラス校の研究によると、「自分は物忘れがひどくなった」と感じている人は認知症のリスクが高いかもしれません。(出典: Subjective Memory May Play Role in Signaling Cognitive Decline)
研究の方法
健康でな20~94才の男女195人を対象に、以下を実施しました:- 主観的な記憶力(自分自身の物忘れの程度)に関するアンケート調査
- 連想記憶力のテスト(注1)
- 気分/抑鬱(注2)に関するアンケート調査
- APOEε4遺伝子(注3)の検査
- PETを用いて脳を撮影してβアミロイド(注4)の蓄積状況を調べた(50才以上の74人のみ)
(注1) 「顔と名前」の関係を記憶するテストと、「単語ペア」の関係を記憶するテストを行った。 各種の記憶力のなかで、老化による記憶力の低下が如実に表れるのは連想記憶力。
(注2) 物忘れは鬱病の症状の1つでもある。
(注3) APOEε4遺伝子のタイプはアルツハイマー病(認知症の中で最も一般的)のリスクを左右する。
(注4) アルツハイマー病患者の脳に蓄積が見られる毒性のタンパク質。結果
年齢・性別・気分・APOEε4遺伝子のタイプを考慮した分析において、主観的な記憶力と連想記憶力との間に関係が見られました(物忘れを実感している人は連想記憶力が低かった)。60才超で関係が明確
連想記憶力を調べた2つのテストのうち顔と名前の関連を記憶するテストに関しては、60才超の場合に限り主観的な記憶力との間に関係が見られました。
つまり、60才以下であれば自分で「物忘れがひどい」と感じていても、「顔と名前」の関係を記憶する能力は実際には低下していなかった。
60才超の人たちのなかでも「顔と名前の関連を記憶するテスト」と「主観的な記憶力」との関係が顕著だったのは、APOEε4遺伝子のタイプ的にアルツハイマー病のリスクが高い人でした。