タモキシフェンの服用により子宮内膜ガンのリスクが増加する心配は無い

(2016年9月) "Breast Cancer" 誌に掲載されたロヨラ大学の研究によると、乳ガンの予防や治療に用いられるタモキシフェンという薬により子宮内膜ガンのリスクが増加する恐れは無いと思われます。

研究の方法
エストロゲン受容体が陽性である初期の乳ガンの患者296人(*)を2つのグループに分けて、一方のグループにはタモキシフェンのみを、もう一方のグループにはタモキシフェンに加えてプロゲスチン(†)を服用してもらいました。

(*) 全員が閉経後の女性。 中央値年齢は59.5才。

(†) 人工の女性ホルモン。 プロゲスチンの服用により子宮内膜ガンの原因となる異変が生じにくくなることが期待される。
結果

服用開始から2年後に、タモキシフェンのみを服用している女性89人(*)とタモキシフェンおよびプロゲスチンを服用している女性80人(*)を調べたところ、タモキシフェンのみのグループでは5人(†)に子宮内膜の異変が見られたのに対して、タモキシフェン&プロゲスチンのグループでは異変が見られたのは1人(‡)でした。 5人と1人という差は、統計学的に有意とはみなされません。 5年後の再調査でも、異変が生じている女性が1人増えているだけでした。

どちらのグループの異変も良性のもので、5年間のうちに子宮内膜ガンになった女性はいませんでした。

(*) 子宮内膜の厚みが5mmを超えていた人のみを対象に生検を行った。 厚みが5mmを超えていたのは、タモキシフェンのみのグループでは67%、タモキシフェン&プロゲスチンのグループでは60%。

(†) 5人のうち4人が増殖期子宮内膜(子宮内膜の細胞の数が異常に増える)で、残りの1人は単純型子宮内膜増殖症だった。

(‡) 増殖期子宮内膜
解説

これまでのデータから、タモキシフェンのみを服用した場合に子宮内膜に異変が生じる率が30%程度であると予測されていました。 それがわずか6%でしかなかった理由について研究者は、超音波検査により子宮内膜にそもそも異変が無いことが確認された人のみを被験者として採用したためだと述べています。

研究者は次のように述べています:
「タモキシフェンは乳ガンの予防にも治療にも有効な薬ですが、子宮内膜ガンを恐れるために服用しない女性が少なくありません。 しかし今回の研究では、タモキシフェンを服用し始める時点で子宮内膜に異変が生じていない女性であれば、(タモキシフェンの服用により子宮内膜に)前ガン性の異変が生じる率が非常に低いという結果になりました」
ただし、すべての無症候性の閉経後女性について現在の慣行を変更できるかどうかを判断するには(*)、もっと大規模な研究で確認する必要があります。 プロゲスチンとタモキシフェンの併用により子宮ガンのリスクを抑制できるかどうかについても、数千人という規模での試験で確認する必要があります。
(*) 「症状が出ない程度の異変が子宮内膜に生じている閉経後女性がタモキシフェンを服用しても安全かどうか」という意味?