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テロメアとは

テロメアの役割


白く光る点がテロメア
(画像提供: NASA)

体の健康は細胞の健康から。 その細胞の健康はDNAとその入れ物である染色体の状態に左右されます。 したがって、染色体同士の融合や染色体に生じた異常はガンなどの病気や老化の原因となります。

染色体を靴紐に例えるならば、テロメアは、靴紐の先端のキャップのようなもので、染色体同士が癒着したり変質したり(ガンの原因になる)しないように保護しています。

テロメアは細胞が分裂するたびに(つまり時間の経過と共に、年を取るほどに)短くなってゆき、テロメアが失われた染色体は不安定になって細胞がガン化する原因になります。 通常は、テロメアが一定以下の長さになった時点で「細胞老化(senescence)」により細胞が破壊されるのですが、このような破壊を免れた細胞がガン化します。
"Genes and Development" 誌(2014年11月)に掲載された研究によると、テロメアの長さが細胞が破壊される水準にまで達しなくても短くなるだけで、それまでテロメアが抑えていた遺伝子のスイッチが入って、老化や病気の原因になると考えられます。

老化の指標

細胞が分裂するたびに短くなっていくというテロメアの性質のために、テロメアは体の老化度を知るための加齢の指標として用いることができます。 テロメアの長さの測定には白血球のテロメアが用いられるのが一般的ですが、それは白血球のテロメアが最も測定しやすいためです。

ヒトは16才になった頃から、テロメアの長さが1年あたり50~100塩基対ほど(*)のペースで短くなってゆきます。 健康な人では、生後から成人するまでの間にテロメアの長さは半分以下になり、その後老年期を迎えるまでにさらに半分の長さになります。
(*) 1年あたり32~45塩基対や、20~40塩基対、24.8~27.7塩基対、55塩基対のペースでテロメアが短くなっていくというデータもあります。 若者なのか老人なのかとか、テロメアを体のどの部分から採取するのかなどで短くなるペースが違うのでしょう。

テロメアと病気のリスク

テロメアが長い人のほうが肺炎などの感染症や心臓病の発症リスクが低いとか、年齢を考慮しても死亡リスクが低いというデータがあります。

しかしガンに関して言えばテロメアが長いほど良いというわけではなく、テロメアが長過ぎると逆にリスクが増加するようです。 複数の研究で、テロメアが長過ぎる場合にも肺ガン・乳ガン・卵巣ガン・子宮内膜ガン・前立腺ガン・大腸ガン・すい臓ガン・腎臓ガン・膀胱ガン・脳腫瘍など各種のガンのリスクが高いことが示されています。

テロメアが短すぎても長過ぎてもガンのリスクが高いというデータもあるので、ガンに関してはテロメアの長さがほどほどであるのが良いのかもしれません。

テロメアが短くなる要因

喫煙・大気汚染・肥満・劣悪な食事(糖分の摂り過ぎなど)・酸化ストレス・慢性炎症によってテロメアが短くなるペースが速まることが複数の研究で示されているほか、ガン・心血管疾患・認知症・肥満・脳卒中・骨粗鬆症・感染症・糖尿病・高血圧や遺伝子のタイプによってもテロメアは短くなります。

心理的ストレス

カテコールアミンと呼ばれるストレス・ホルモンが染色体を傷つけることから、慢性的な心理的ストレスによってもテロメアが短くなるのではないかと考えられています。 抑鬱がある人はテロメアが短いという研究や、居住地域の環境が劣悪(騒音がひどかったり治安が悪かったりする)であるとテロメアが短いという研究もあります。

ただし、"Brain, Behavior, and Immunity" 誌(2016年)に掲載されたスタンフォード大学のメタ分析(複数の類似研究の結果をまとめたもの)では、少なくとも数ヶ月程度にわたる慢性的な心理的ストレスであればテロメアの長さに影響はないという結果になっています。

テロメアの長さは原因ではなく結果?

"Experimental Gerontology"(2016年6月)に掲載されたスタンフォード大学の研究によると、テロメアが短くなるために病気になるのではなく病気になるとテロメアが短くなるのだと考えられます。 ただし、心臓病に関しては、テロメアが短いことによってリスクが2%増加するという結果でした。

テロメアの長さを維持する方法

テロメアは、運動習慣・健康的な食生活・質の良い睡眠により減少を食い止める、あるいは長さを回復することが出来ると思われます。

運動

運動によってイリシンというホルモンの分泌量が増加しますが、このイリシンの血中量が多い人ほどテロメアが長いという結果になった研究があります。 テロメアの長さを回復させるには運動するよりも座って過ごす時間を減らすほうが有効だという研究もあります。

食生活

食生活がメディテラネアン・ダイエットに近いとテロメアが長いという研究や、オメガ3脂肪酸を積極的に摂取することによってテロメアの長さを維持できる可能性があるという研究があります。 オメガ3脂肪酸というのはDHAやEPAなどのことで、背の青い魚に豊富に含まれています。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校が(UCSF)2014年に発表した研究では、砂糖入りの清涼飲料水(コーラなど)を1日あたり570ml飲んでいる人ではテロメアの長さが4.6才分短くなっているという結果になってます。

砂糖入りの清涼飲料水によるテロメア短縮作用は喫煙によるものと同程度で、運動によるテロメア延長効果と逆方向に同程度でした。 テロメアの長さを維持する上では、タバコや砂糖を控えるのが運動と同程度に有効であると言えるでしょう。

スタチン

コレステロールを下げるのに使われる「スタチン」という処方薬でテロメアが長くなったという研究もあります。

テロメラーゼ


テロメラーゼ

テロメラーゼとは、テロメアの長さを回復する酵素のことです。 このように言われるとテロメラーゼに不老長寿効果を期待してしまいますが、実はそれどころかテロメラーゼは人体に有害で、ガン細胞の無限分裂や慢性炎症の原因になると言われています。 参考記事: テロメラーゼが慢性炎症の原因だった

ヒトにおいてテロメラーゼは、生殖細胞と幹細胞、そしてガン細胞以外の細胞では活性化していません。 そのために健康な普通の細胞では、細胞分裂で短くなったテロメアの長さが回復されずに細胞が老化する一方で、ガン細胞は無限に増殖し続けます。

2014年9月に発表された研究によると、テロメラーゼには自らの機能を停止するスイッチが備わっていて、そのために普通の細胞にはテロメラーゼがほとんど存在しません。