側頭葉てんかんの発作から時間が経っていても水泳がニューロンの回復に有効?

(2016年6月) "Cardiovascular Psychiatry and Neurology" 誌に掲載されたインドの研究(ラットの実験)によると、側頭葉てんかんの発作が生じてから時間が経っていても、水泳で運動することによって脳の領域のうち感情・学習・記憶・運動に関与する部分における神経可塑性(*)が改善される可能性があります。出典: Effects of Swimming Exercise on Limbic and Motor Cortex Neurogenesis in the Kainate-Lesion Model of Temporal Lobe Epilepsy
(*) 脳が学習および記憶の形成に反応して変化する能力のこと。
研究の背景

側頭葉てんかんの場合、抗てんかん薬では脳細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を十分に防げないことが少なくありません。

これまでに行われたラット実験では、てんかん発作の直後に有酸素運動である水泳を行うことでニューロン新生が増加することが示されています。 今回の研究では、有酸素運動が長期的にもニューロン新生の増加に有効であるかどうかを調べました。

研究の方法
生後4ヶ月のオスのネズミを次の5つのグループに分けて、脳の様子を比較しました:
  1. 何もしないグループ(比較対照用)
  2. 水泳(*)をするだけのグループ
  3. 偽の脳手術(†)を受け、水泳をするグループ
  4. カイニン酸を用いて癲癇に似た状態を人為的に引き起こされるグループ
  5. カイニン酸で処置されたのちに水泳をするグループ

(*) 1日あたり15分間の水泳を30日間続ける。

(†) 頭蓋骨に穴をあけてハミルトン製シリンジを脳に挿入(おそらく癲癇の手術と同じ手順)するけれど、脳を実際にいじることはしないという形式だけで実効性はない手術。

実験は2回行われました。 1回目の実験では、カイニン酸により癲癇発作を引き起こしたのち直ちに水泳の習慣を開始させました。 2回目の実験では、同様に発作を引き起こしたのち60日が経過してから水泳の習慣を開始させました。

そして、①海馬のCA1野・CA3野・歯状野、②扁桃体の外側基底核、および③運動皮質の複数の地点において、生存しているニューロンの数と樹状突起の分岐点・交差点を数えました。

結果
癲癇発作を引き起こしたのち直ちに水泳をした場合にも60日が経過してから水泳をした場合にも、水泳をしない場合に比べて大脳辺縁系(*)および運動皮質のすべての地点において、ニューロンの数と樹状突起の分岐点・交差点が増えていました。 ただし、60日後から水泳をし始めるよりは発作直後に水泳をし始める方が効果的でした。
(*) 海馬と扁桃体は大脳辺縁系の一部。