テストステロン補充療法で心臓発作のリスクが増加

(2014年1月)"PLoS One" に掲載された米国の研究によると、65才未満の男性でもテストステロン補充療法(ジェル、パッチ、注射などの方法でテストステロンを投与する)によって心臓発作のリスクが増加すると考えられます。
65才超の男性を対象にテストステロン補充療法の効果を調べていた臨床試験が、心臓発作などを起こす被験者が増えたために中止されるという事件が 2010年に起こっています。
研究の方法

今回の研究では、全米の医療記録からテストステロン補充療法を受けた男性のうち①65才未満で心臓疾患の病歴がある男性と、②(心臓疾患の病歴の有無に関わらず)65才超の男性のデータを抽出して分析しました。 データに含まれていた人数は 56,000人近くで、そのうちの 48,000人以上が65才未満でした。

結果

分析の結果、①と②いずれのグループにおいても、補充療法の開始から90日間で心臓発作のリスクが2倍になっていたのです。 しかし、さらに90日間の追跡調査を行ったところ、テストステロン補充療法を中止した人では心臓発作のリスクが元に戻っていました。

今回の研究では、65才未満のグループに含まれていたのは心臓疾患の病歴のある人でしたが、研究者によると、心臓疾患の病歴ない人でもテストステロン補充療法により心臓発作のリスクが増加する可能性があります。

考えられる原因
テストステロン補充療法によって心臓発作のリスクが増加する仕組みは明らかになっていませんが、研究者によると次の2つの可能性が考えられます:
  • テストステロンによって血栓(血管が詰まる原因になる)が促進される。 血栓は、血管が細くなる高齢者では特に問題となります。
  • テストステロンによってエストロゲンが増加する。 エストロゲン補充療法によって心臓トラブルのリスクが増加することが、女性だけでなく男性でも報告されています。
今回の研究の弱点

今回の研究に関与していない専門家の話では、今回の研究には医療記録を用いたという弱点があります。 すなわち、テストステロンの投与を受けたかどうかという判断を、医師にテストステロンを処方されたかどうかだけで判断しており、患者が処方されたテストステロンを実際に使用したかどうかが不明だというのです。

また、この専門家によると、過去の研究の中には、テストステロン不足によって心臓疾患のリスクが増加することを示すものもあります。 ただし、この専門家はテストステロン製剤のメーカーである Auxilium社の顧問を務めていたことがあります。

ちなみに、テストステロン補充療法製剤のメーカーである AbbVie社と Actavis社に、今回の研究に関するコメントを依頼してもナシのつぶてでした。

結局どうするべきか

今回の研究者によると、テストステロン補充療法を行うかどうかを医師と相談するときに、心臓発作のリスクも考慮するようにするべきです。

また、前出の専門家の話では、エネルギー不足を感じる男性はテストステロン不足よりもうつ病・甲状腺の異常・ビタミンB12不足をまず疑うべきだそうです。