テストステロンで動脈硬化のリスクは増えないが期待される効果も無い?

(2015年8月) "The Journal of the American Medical Association" に掲載された Brigham and Women's Hospital(米国)の研究で、テストステロン(男性ホルモン)の使用は動脈硬化の進行に影響しないが期待されるような効果ももたらさないという結果になりました。

言葉の説明

テストステロン
テストステロンは主として精巣から分泌されるホルモンで、男性の生殖能力・筋肉の成長・骨量・体毛などに影響します。 テストステロンの分泌量は年を取ると減少します。 40才以降では1年に1%の割合で分泌量が減ってゆきます。

テストステロン補充の副作用として心血管疾患イベント(心臓発作や脳卒中)のリスク増加が懸念されていますが、そのようなリスクが増加しないという結果になった研究も存在します。

動脈硬化
動脈硬化といえば一般的にはアテローム性動脈硬化を指します。 アテローム性動脈硬化ではコレステロールやカルシウムなどを成分とするプラークが動脈に蓄積します。 動脈硬化は心臓発作や脳卒中のリスク要因です。

研究の方法
この研究では、60才超で総テストステロン(*)の血中濃度が100~400ng/dL(少ない~正常だが少なめ)の男性300人超を2つのグループに分けて、テストステロンまたはプラシーボのジェルを3年間にわたって毎日使用してもらうという二重盲検試験を行いました。
(*) 総テストステロン=遊離テストステロン+アルブミン結合テストステロン+SHBG結合テストステロン
試験で調査した項目は次のようなものでした:
  • 冠動脈石灰化の程度(*)
  • 頚動脈の内膜中膜肥厚(†)
  • 男性機能
  • 生活の質(QOL)

(*) 心臓へと至る動脈に蓄積しているカルシウムの量

(†) 内膜中膜肥厚とは動脈壁の最も内側の2つの層の厚みのこと。 頚動脈の内膜中膜肥厚は動脈硬化の指標として用いられる。
結果

プラシーボのグループに比べてテストステロンを使用したグループで動脈硬化のリスク(冠動脈石灰化の程度と頚動脈の内膜中膜肥厚)は増加していなかったものの、男性機能も生活の質も改善されていませんでした。

留意点
今回の研究で調べたのはテストステロンの使用が動脈硬化の進行に及ぼす影響であって、テストステロンの使用が心血管イベントのリスクに及ぼす影響ではありません。(したがってテストステロンにより動脈硬化のリスクが増えないにしても、心血管イベントのリスクは増えるかもしれない)