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子供用教材のイラストは学習の妨げになりかねない

(2013年5月) オハイオ州立大学の研究によると、子供用の教材に子供を引き付ける目的で描かれるイラストは、使い方を間違えると学習を逆に阻害します。

今回の研究で6~8歳の子供122人を対象にグラフの読み方を教えたところ、グラフの棒が単色でシンプルなものである場合に最も学習が捗(はかど)りました。 グラフの棒に靴や花などの絵を添えると、グラフの棒の高さよりも絵の数に意識が向いてしまうなどで学習が捗りませんでした。

この研究で用いた教材のイラストは、無意味なイラストではなく学習の内容と関連のあるイラストでした。 落し物の靴の数を示すグラフに靴のイラストを入れ、描かれている靴の数と、グラフが示す数値とを対応させたのです。

このようなイラストは一見、理解の補助になりそうですが、実際には、グラフの読み方を学ぶうえでは障害となりました。

子供たちがグラフの読み方を学んだかどうかをテストするために、今度はグラフが示す数値とグラフ内に描かれるイラストの数が一致しない花の絵のグラフを子供たちに読ませたところ、シンプルなグラフを用いてグラフの読み方を教わったグループのほうが、イラスト入りのグラフで教わったグループよりも、きちんとグラフを読める率が高かったのです。

シンプル・グラフで教わったグループにおいては、6歳児では75%、7歳児と8歳児では100%がきちんとグラフを読めました。 一方、イラスト・グラフで教わったグループにおいては、6歳児では90%、7歳児では72%、そして8歳児では30%ほどが、きちんとグラフ内のイラストの数を数えることができました。

水玉模様などの模様のついた棒グラフで同様にテストしたところ、イラスト・グラフでグラフの読み方を教わったグループの子供の中には、哀れにもグラフの中に描かれた(無数の)水玉の数を数えた子供もいました。
この実験では、わざわざ誤解を招くような形でイラストを用いたのでしょうか。 教わった通りにグラフを読む以外に、グラフ内のイラストの数を数えることでも同じ結果に辿り着ける。 イラスト入りのグラフで勉強したグループの子供たちは、イラストに注意を引かれるあまり、先生が教える内容に耳をかさず、イラストから独自にグラフの読み方(間違った読み方だけど)を学習してしまったのでしょう。

研究グループは、この結果を確認するために、他にも色々な実験を行いましたが、そのうちの1つとして、最初にグラフの読み方を教える際に、イラスト・グラフだけれどもグラフ内のイラストの数とグラフの示す数値が全く一致しないというものを用いるという実験が行われました。

このイラスト・グラフによる学習効果をテストした結果、グラフ内に描かれたイラストの数からグラフの示す数値を判断するという手法が使えないにも関わらず、正しいグラフの読み方も身に付いていない傾向にありました。

研究者は次のように述べています:
「子供は、絵の入ったグラフを好み、喜んで教科書を使い始めるかもしれませんが、教科書を使うというのと勉強をするというのはイコールではありません。 子供好みのグラフでは、学ぶべき情報や手順に注意が向かないのです」

さらに、この研究で幼稚園や小学校の先生16人に、子供が好みそうな楽しげなグラフを教材として使いたいかと尋ねたところ、全員が「使いたい」と答えました。 シンプルなグラフよりも楽しげなグラフの方が教材として有効である(実際にはそうではないのですが)と感じたのです。

研究グループによると、今回の結果は算数やグラフだけに限った話ではありません。

「子供用の教材を作成するときには、子供の注意力が未だ発達段階にあることをわきまえて、注意を向けさせたいところに注意が向くように工夫して教材を作る必要があります。 不要な視覚的情報は、必要なポイントから子供の注意をそらす原因になりかねません。

ただし、教材にイラストを用いるなというわけではなく、イラストが子供に与える影響を十分検討したうえで用いましょうということです」
教材におけるイラストの役目は、教材に子供を引き付けるだけでは不十分で、そういう意図でイラストを用いると学習に対して弊害ともなりかねない。 イラストが毒にも薬にもなる重大な要素であるということを認識して慎重に使用しましょうということですね。