(2013年6月) "Mutagenesis" 誌に掲載されたローレンス・バークレー米国立研究所の研究により、二次喫煙(受動喫煙、副流煙)ならぬ三次喫煙でもヒトの細胞のDNAが有意に損傷されることが明らかになりました。
この研究ではさらに、タバコに由来する有害物質の濃度が、一時的に三次喫煙に暴露された場所よりも慢性的に三次喫煙に暴露されている場所で著しく高く、健康被害も大きいことも明らかになりました。 慢性的な三次喫煙は「子供の前ではタバコを吸わない」という方針で親が喫煙している家庭で容易に発生します。
今回の研究では、コメット分析と長アンプリコン-qPCR分析(long amplicon-qPCR assay)により、三次喫煙に暴露された紙片の遺伝毒性を試験し、三次喫煙によりDNA鎖の破壊と酸化によるDNA損傷の両方が生じているいることを明らかにしました。 遺伝毒性は、喫煙や副流煙が各種のガンの原因となる理由の1つです。 つまり、三次喫煙の有害性は、喫煙や二次喫煙の有害性と同種のものであるということでしょうか。
試験に用いた紙片サンプルは、紙片をタバコの煙にさらすことで作成しました。 一時的な三次喫煙(例えば、普段タバコを吸う人がいない家庭に、タバコを吸うお客さんが来た)を想定したサンプルの作成においては、20分間にわたって吸われたタバコが5本分の煙に紙片をさらしました。
一方、慢性的な三次喫煙(例えば、家族の中に喫煙者がいて家で毎日タバコを吸う)を想定したサンプルは、196日間(計258時間)にわたってタバコの煙に紙片をさらすことで作成しました。 196日間の期間中には、合計で35時間換気を行いました。
三次喫煙とはタバコの煙が消えた後にも喫煙現場の椅子・机・壁・床などの表面に残っている有毒物質への暴露のことで、2009年に初めてその存在が認知されました。 二次喫煙よりも有害物質の量は減りますが、三次喫煙では一次喫煙や二次喫煙よりも慢性的に(四六時中)有害物質にさらされるのが問題です。
三次喫煙は、喫煙者の同居人や喫煙者が住んでいた賃貸住宅の次の住人に被害を与えるほか、ホテルの部屋・飲食店・カラオケ店・レンタカーなど不特定多数の人が利用する場所において、喫煙者以外の人に被害を及ぼします。
三次喫煙で問題となる有害物質の中には、発がん性物質として最も強力なものの1つであるニトロソアミン類(NNA、NNK、NNN)も含まれています。
タバコの煙に含まれるニコチンは、亜硝酸(室内に普通に存在する)と反応してニトロソアミンを形成します。 また、ニコチンはオゾン(これも室内に普通に存在する)とも反応し、超微粒子を形成します。 この超微粒子は、有害な化学物質を抱えて人体組織を通過し体内に入り込みます。 したがって、三次喫煙による有害物質は、呼吸・経口・皮膚接触などにより人体に入り込みます。三次喫煙の一番の被害者は乳幼児です。 乳幼児は色々な物を口に入れるため、皮膚や呼吸を経由して汚染物質にさらされる場合よりも三次喫煙の被害が大きくなります。 さらに、乳幼児は体が小さいうえに心身が発達している最中でもあるため、三次喫煙による悪影響は甚大です。
自分自身が喫煙者である場合には、子供に触れる前に手を洗って服も着替える必要があります。
三次喫煙のリスクは払拭することが難しく、例えば、喫煙者が住んでいたアパートでは、喫煙者が引っ越してから2ヶ月経っても三次喫煙の有害物質が残っています。
三次喫煙の有害物質は除去が難しいため、掃除機・拭き掃除・換気・カーテンや寝具の洗濯などでは(少しは効果がありますが)完全には除去できません。 サンディエゴ州立大学の研究者によると、タバコ由来の有害物質に汚染された壁の上から塗装しても三次喫煙を完全に防ぐことは出来ません。
三次喫煙を完全に防ぐには、部屋の家具・カーペット・壁装材などをすべて新しいものに取り替えるしかありません。