T細胞を造る胸腺の老化が早いのは抗酸化物質が不足するから

(2015年8月) "Cell Reports" 誌に掲載されたTSRIフロリダ・キャンパス(米国)の研究により、加齢によって新しい免疫細胞を生産する能力が壊滅的に損なわれて免疫力が低下するメカニズムの解明が進みました。出典: Scripps Florida Scientists Show How Aging Cripples the Immune System, Suggesting Benefits of Antioxidants

研究の方法
この研究ではマウスの組織を用いて、胸腺(*)の主要な細胞であるストローマ細胞およびリンパ系細胞の遺伝子の活性を分析しました。 マウスの組織は機能および加齢による萎縮においてヒトの組織に類似しています。

(*) 胸腺ではTリンパ球(T細胞)と呼ばれる免疫細胞が生産されます。 感染症に対抗するにはTリンパ球が絶え間なく補充され続けている必要があります。 胸腺は成人後まもなく速いペースで萎縮し始め、萎縮と共にその機能も失われてゆきます。
結果

ストローマ細胞においてカタラーゼと呼ばれ抗酸化能力を有する酵素が特に欠乏し、そのために代謝の副産物として生じる活性酸素の量が増加し、それによって代謝的なダメージが促進されていました。

抗酸化物質が効果

カタラーゼの主な役割を確認するためにマウスの遺伝子を改造してカタラーゼを増やしてみたところ、(マウスの一生において)胸腺のサイズが維持される期間が格段に長くなりました。 さらに、食事から摂ることの出来るビタミンCなどの抗酸化物質を投与することによっても、胸腺が加齢による萎縮から保護されました。

解説

今回の結果は「フリーラジカル説」を支持する材料となります。 フリーラジカル説とは、代謝の正常な過程においても生じる過酸化水素などの活性酸素種が細胞にダメージを与え、それが老化と加齢性疾患の一因になるとする仮説のことです。

他の仮説としては、フリーラジカル説の他にも性ホルモン(特にテストステロンなどの男性ホルモン)が加齢において主要な役割を果たしているとする説などがあり、実際のところ胸腺は男性ホルモンによく反応しますが、そのような仮説では「なぜ胸腺が体の他の部分よりも随分と速いペースで萎縮するのか?」という重要な疑問に答えることができません。

研究者は次のように述べています:
「今回の研究によると、老化の基本的なメカニズムすなわち代謝ダメージの蓄積は胸腺でも体の他の組織でも同じです。 しかしながら、胸腺以外のほぼ全ての部分では(年を取っても)カタラーゼが十分に存在するのに対して胸腺ではカタラーゼの保護効果が(早期から)欠乏するために代謝ダメージが(若いうちから)蓄積します」