トキソプラズマにガン患者に生じた免疫寛容を打破する効果?

(2016年7月) "PLOS Genetics" に掲載されたダートマス大学の研究(マウス実験)によると、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)という寄生虫が分泌するタンパク質に、免疫系を活性化してガン腫瘍を攻撃させる効果があります。

免疫寛容

ガンに対抗するための有望な方法の1つは、患者の体に備わる免疫系に腫瘍細胞を除去させることです。 しかし免疫寛容が生じた患者では、免疫系がガン細胞を攻撃すべき対象として認識できなくなります。

これまでの研究

これまでの研究ではマウス実験において、トキソプラズマの注射が何種類かの固形ガンの治療に効果を発揮することが示されています。

すい臓ガン患者の免疫寛容を打破するのにリステリア菌(Listeria monocytogenes)を用いようとする試みもなされていて、現在臨床試験が行われています。

今回の研究

今回の研究では、トキソプラズマが分泌するタンパク質のうちどれに免疫寛容を打破する効果があるのか、そしてそのタンパク質がどのように作用するのかが明らかになりました。

マウス実験

侵攻性の強いタイプの卵巣ガンが生じているマウスを用いた実験を行ったところ、トキソプラズマが宿主の細胞に侵入する前後に分泌するタンパク質に、宿主の免疫系を効果的に機能させたり、卵巣ガンのマウスの生存率を増加させたりする効果がありました。

トキソプラズマについて

国立感染症研究所によると、トキソプラズマには全人類の1/3が感染しています。 そして感染者数が多いだけあって、一般的にはトキソプラズマに感染しても深刻な症状は生じません。 ただし、妊娠中の女性やHIV患者など免疫力が弱っている人はトキソプラズマにより深刻な問題が生じる恐れがあります。

感染源

豚などの獣の生肉を食べたり、土壌と接触したり、生水を飲んだりするとトキソプラズマに感染することがあります。 猫の糞便から感染することも少なくありません。

症状
  • 健康な人がトキソプラズマに感染した場合には症状が出ないのが一般的です。 症状が出る場合には、発熱や倦怠感など。
  • 妊娠中の女性がトキソプラズマに感染すると、流産・死産や胎児に奇形が生じる恐れがあります。
  • 免疫力が衰えている人がトキソプラズマに感染すると、肺炎や脳炎(意識障害・けいれん・視力障害など)が生じます。