〔記事リスト〕 ハンドソープや歯磨き粉に使われるトリクロサンは有害無益

トリクロサンとは

トリクロサンは抗菌・抗カビ剤として、ハンドソープ・歯磨き粉・デオドラント・ボディーソープ・マウスウォッシュ・布団のカバーやシーツ・衣服・カーペット・玩具・ゴミ袋など数多くの抗菌製品に使われている有機化合物です。

トリクロサンは、そもそも院内感染を防止するために開発された薬剤であったのが、日用品にまで使われるようになりました。 米国環境省の推算では、毎年100万ポンド(1ポンドは450g程度)のトリクロサンが製造されています。

米国では 2017年から使用禁止

2016年9月には米国食品医薬局(FDA)が、トリクロサンとトリクロカルバンを含む19種類の化学物質の石鹸やハンドソープへの使用を禁止することを決定しました。 FDAのこの決定(リンク先は英文)は 2017年9月6日から効力を発揮します。

ただしTIME紙(リンク先は英文)によると、トリクロサンなどの使用が今回禁止されるのは水を同時に使用する製品だけで、ハンド・サニタイザーなど水を使わない衛生製品には今回の決定は適用されません。

トリクロサンの抗菌剤としての効果は怪しい

FDAによると、トリクロサンの添加が有効なのは歯肉炎を防止するための歯磨き粉だけです。 それ以外の製品では、トリクロサンが感染症の防止に有効であることは証明されていません。 例えば、細菌の除去においてトリクロサン入りの薬用ハンドソープ(薬用せっけん)が普通のハンドソープよりも効果的であるというデータも存在しません。

トリクロサンは有害物質

トリクロサンは体内においてエストロゲン(女性ホルモン)のように作用してホルモンを撹乱する内分泌撹乱物質であり、女性では乳ガンの、男性では前立腺ガンや低テストステロン(男性ホルモン)症の原因になると考えられています。

他にもトリクロサンは、筋肉機能に干渉する・花粉症などのアレルギーの原因となる・人体に住む善玉菌にとって有害となるなどの問題点が指摘されています。

さらに、これは以前から指摘されていたことですが、抗菌剤入りの製品が本来の目的(院内感染の防止)から外れて日常的に使われることで耐性菌の発生が助長され、本当に必要な人(体が弱って免疫力が落ちた患者)にとって抗菌剤が役に立たなくなってしまう恐れがあります。

トリクロサンを完全に避けるのは難しい

トリクロサンはあまりにも幅広く使用されているため、完全に回避するのが困難です。 とある検査では75%の人からトリクロサンが検出されるという結果になっていますし、別の調査でも授乳中の女性の97%の母乳からトリクロサンが検出されています。

ヒトだけでなく、藻類から魚類、イルカにいたるまで、あらゆる水生生物の体内からもトリクロサンが検出されています。
環境中への流出
抗菌製品に用いられるトリクロサンなどの化学物質は、家庭などの排水から下水へ流れ、下水から下水処理場、そして最終的には河川に行き着きます。 環境中に流出したトリクロサンは、水処理場で使用される塩素と結びついて塩素化トリクロサン誘導体(CTD)と呼ばれる物質になります。 トリクロサンもCTDも、太陽の光に当たるとダイオキシンを発生します。
規制の対象に

2014年5月には米国ミネソタ州でトリクロサンを消費者向けの大部分の製品への使用を禁止する法案が承認されています。 法案が発効するのは 2017年6月1日。 トリクロサンが禁止されるのは米国で初めてです。 米国全体でも遠からず、消費者向け製品へのトリクロサンの使用が禁止される可能性があります。

トリクロサンは 2012年にジョンソン&ションソンが今後製品に使用しないと宣言した発がん性の化学物質の1つにも挙げられており、トリクロサンを使用するメーカーは減りつつありますが、日本のメーカーの中にも未だトリクロサンを使用しているものがあります。

トリクロサンへの暴露量を減らす方法

トリクロサンを少しでも避けるには、「抗菌」や「殺菌」などの効果を謳う製品を避けましょう。 石鹸や歯磨き粉などの衛生用品だけでなく、抗菌効果のあるタオル・まな板・靴・服・寝具などにもトリクロサンは使われていることがあります。 「トリクロバルカン」という化学物質が使われている製品も避けましょう。 トリクロバルカンはトリクロサンと同じような作用を持つ物質です。

記事リスト
  • 薬用石鹸の殺菌・除菌効果は普通の石鹸と変わらない
    殺菌成分としてトリクロサンを含有する薬用石鹸と普通の石鹸とで殺菌および洗浄の効果を比較したところ、実際的な違いは見られなかった。
  • 薬用のハンドソープやシャンプーは有害
    マウスと魚を用いた実験で、トリクロサンにより筋肉が衰えるという結果に。
  • トリクロサンで黄色ブドウ球菌感染症のリスクが増加
    トリクロサンが鼻の穴への黄色ブドウ球菌の定着を促進することにより、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に感染するリスクが増加すると考えられる。 被験者の成人の41%の鼻道からトリクロサンが検出された。 この41%の被験者では黄色ブドウ球菌が定着している率が高かった。
  • トリクロサンが子供のアレルギーの原因に
    米国人またはノルウェー人の10歳の子供623人を対象に行われた調査で、尿中のトリクロサンの濃度が高い子供ほどアレルギーやアレルギー性鼻炎である率が高いという結果に。 トリクロサンによって皮膚、口腔、腸の細菌叢(細菌フローラ)が変化して善玉菌が減るためにアレルギーのリスクが増加するのだと考えられる。 ノルウェーの子供では50%、米国の子供では80%の割合で、トリクロサンが尿から検出された。
  • 化粧品の保存料にも使われているパラベンが胎児に悪影響
    520人の男の子と、その母親を対象に行われた調査で、尿から検出されたトリクロサンの量が多かった妊婦では胎児の成長が遅れる傾向が見られた。
  • 歯磨き粉にも使われるトリクロサンで乳ガンのリスクが増加する可能性
    生体外実験とマウス実験により、トリクロサンとオクチルフェノール(塗料や殺虫剤に使用される化学物質)がヒトの乳ガン細胞の成長を促進することが示された。 トリクロサンとオクチルフェノールはいずれも、乳ガン細胞の成長に関与する遺伝子に作用してガン細胞の量を増やしていた。
  • トリクロサンで肝繊維症や肝臓ガンのリスクが増加する可能性
    マウス実験において、トリクロサンが構成的アンドロスタン受容体(CAR)」というタンパク質に干渉することによって肝細胞の繊維化を促進し、それが継続することによって肝臓ガンのリスクが増加することが示された。
  • 抗菌製品による環境汚染
    抗菌剤が一般に広く使用されているため、河川へと大量に流出したトリクロサンなどの化学物質の微生物による分解が追いつかない状況にある。
  • 健康な人は薬用ソープの使用を控えましょう
    「薬用セッケンや軟膏の使用は、ICU患者であるから必要なのであって、MRSAなどの病原性の弱い菌に感染するリスクの低い患者や健康な人たちが日常的に薬用ハンドソープなどの抗菌製品を使用するのは、ほぼ無意味であるばかりか、病原菌に薬剤への耐性を与えてやるようなものだ」