「最新健康ニュース」のコンテンツを閲覧以外で利用する方は「引用・転載・ネタ探しをするときのルール」をご覧ください。

米国食事ガイドラインは政治的圧力により内容に変更が加えられた

(2016年1月) 1月7日に米国政府が米国人向けの新しい食事ガイドライン(2015-2020 Dietary Guidelines for Americans)を発表しましたが、この新しい食事ガイドラインについて、DGAのベースとなる報告書の作成に関わったハーバード大学の研究者が所見を述べています。出典: Assessing the New U.S. Dietary Guidelines

従来のガイドラインと今回のガイドラインとの最も顕著な違い

「従来との顕著な違いは、1日の摂取カロリーに糖分の添加によるカロリーが占める割合を10%以下にすることが推奨されるようになったという点です。 食事ガイドライン(以下「DGA」)において糖分の添加によるカロリーに上限が定められたのは今回が初めてです。 今回のDGAの影響で、米国食品医薬局(FDA)も 『添加された糖類』 と 『糖類』 とを区別するようになるでしょう」

「もう1つ重要なのは、脂肪の種類が重視されるようになったという点です。 総脂肪摂取量の上限が撤廃され、代わりに飽和脂肪の摂取量は1日の総摂取カロリーの10%までにするのが望ましいと定められました。 飽和脂肪の代わりに不飽和脂肪それも特に多価不飽和脂肪(オメガ3脂肪酸など)を摂ることが推奨されます。 ひとことで言えば、『低脂肪ではなく低飽和脂肪の食事が良い』 というわけです」

「コーヒーを適度に飲むのも健康的であると認められました。 『適度に』 とは、240mlほどのカップで1日に3~5杯です。 砂糖やクリームは控えめにすることが推奨されます」

「今回のDGAでは、菜食主義やメディテラネアン・ダイエットなどのような健康的な食事法も重視されています。 各人の文化や食事の好みに合わせて食生活に取り入れるとよいでしょう」
赤身肉だけでなく加工肉まで許容されている点について
「この点について、DGAはDGACの報告書と食い違っています(*)。 報告書では、慢性疾患の予防を目的として赤身肉と加工肉の摂取量を減らすことを推奨しています。 今回のDGAでは 『より健康的な飲食物の選択への移行』 が推奨されていますが、具体的にどのような飲食物の摂取量を減らすべきなのには触れていません(†)

(*) DGACとは "Dietary Guidelines Advisory Committee(食事ガイドライン諮問委員会)" のことです。

DGAは、米国の政府機関(Office of Disease Prevention and Health Promotion)がDGACの報告書に基づいて5年ごとに新しく作成します。 DGAの内容の最終的な決定権はこの政府機関にあるので、DGA作成の時点で食肉業界などからの圧力が加わったのでしょう。

(†) 本来なら摂取量を減らすべき食品として肉類が挙げられていてしかるべきなのに、食肉業界からのプレッシャーにより「肉類を避けるべし」と明示できなかったために、具体的に何を減らせば良いのかが不明確になっているということでしょう。

「全体的に、今回のDGAよりもDGAC報告書の方が(推奨の内容に関して)具体的です。 DGAC報告書では、健康に良いので摂取が推奨される食品を果物・野菜・全粒穀物ナッツ類・魚介類などと具体的に指定しているだけでなく、健康に悪いので避けるべき食品についても赤身肉・加工肉・糖類の添加された飲食物・精製穀物という具合に具体的に明示しています」

「ところがDGAでは、このように具体的に指定したはずの推奨内容が 『栄養を豊富に含む様々な食品』 などという具合に曖昧な表現に置き換えられてしまっています。 このように曖昧な表現は世間に混乱を招きます」

他の専門家も同意見
University Hospitals Case Medical Center に勤務する心臓医も、この点について不満を漏らしています出典: Reduce Sugar and Salt according to New Dietary Guidelines...
「今回のガイドラインは、赤身肉と加工肉の摂取量制限については少し不明瞭なところがあります。 飽和脂肪酸の摂取量を減らすべきであるとしながら、どの食品を控えることによって飽和脂肪酸の摂取量を減らすべきなのかを明示していないのです。 飽和脂肪酸は赤身肉と加工肉に多く含まれています」
DGAに盛り込まれず残念だった推奨内容

「やはり、赤身肉・加工肉と糖類の添加された飲料です。 赤身肉・加工肉や糖類の添加された飲料の摂取量を減らすというのは、『飽和脂肪の摂取量を1日の総摂取カロリーの10%までにする』 などよりも国民にとって理解しやすいし実行も容易なはずなのに妙なこともあるものです」

「また、地球環境への配慮というのもDGAC報告書では主要なトピックでしたが、米国農務省によりDGAの範囲外であるとされたためDGAから除外されました。 米国農務省がこのようなことを言い出したのは、議会と食肉業界からの政治的な圧力が原因です」

「科学的なデータにより、果物・野菜・全粒穀物・豆類・ナッツ類などの植物性食品を積極的に食べ、赤身肉を筆頭とする動物性食品は控えめに食べるのが健康的であるだけでなく環境にも優しいことが示されています(*)
(*) そうではないとする研究もあります。
「デンマーク・オランダ・オーストラリア・スェーデン・ブラジルなどの国々では、環境への影響も考慮して食事ガイドラインが作成されています。 DGAではそれが除外されているために、食品の選択が地球環境に及ぼす影響について国民に伝えるチャンスと、ヒトの健康だけでなく地球の健康にまで配慮した食品システムを作り出すチャンスが損なわれています。 今回のDGAC報告書が、せめて将来のDGAに地球環境への配慮が盛り込まれる礎になってくれればと願います」