膵臓ガンの予防にビタミンCが有効かどうかは不明確

(2016年2月) "PLOS ONE" に掲載された Ningbo Medical Treatment Center Lihuili Hospital(中国)のメタ分析で、膵臓ガンの予防にビタミンCの摂取が有効であるかどうかは現時点では不明確であるという結果になりました。

ビタミンCと膵臓ガンの予防
膵臓ガンの発生と進行には膵臓の炎症が重要な役割を果たしていますが、その炎症には酸化ストレス(*)が関与しています。 そして、ビタミンCは強力な抗酸化物質です。
(*) 酸化ストレスとは、活性酸素種(ROS)に対抗するための抗酸化物質が不足している状態のことです。 活性酸素種は人体にとって必要な存在ですが、ガンや老化の原因にもなります。

ビタミンCにアポトーシス(プログラム細胞死)の誘引・免疫機能の強化・フリーラジカルが引き起こすDNA損傷の阻止といった作用のあることが複数の実験で示されています。 膵臓における腫瘍発生前の病変を阻止する作用がビタミンCにあることを動物実験により示した研究もあります。

このような理由から、ビタミンCに膵臓ガンを予防する効果があるではないかと期待されています。

研究の方法
食事とサプリメントによるビタミンC摂取量と膵臓ガンのリスクとの関係を調べた20の観察研究のデータ(膵臓ガンの症例数は5千件近く)を分析しました。 20の観察研究のうち14は症例対照研究で、6つはコホート研究でした。
症例対照研究とコホート研究

後ろ向き症例対照(ケースコントロール)研究では、すでに病気にかかっている患者のグループを健常者のグループと比較します。 今回の話であれば、膵臓ガン患者のグループと健常者のグループとで日ごろのビタミンC摂取量を比較して膵臓ガンのリスクと照らし合わせる研究ということになります。

一方、前向きコホート研究では研究開始の時点では被験者全員が健常者で、その被験者たちを調べたい項目の有無によって複数のグループに分けて一定の期間を追跡調査します。 今回の話だと例えば、健康な人たちを日ごろのビタミンC摂取量に応じて複数のグループに分けて、その後の一定期間(10年など)における膵臓ガンの発生リスクをグループ間で比較するという具合です。
結果
  • 20の研究全体でビタミンC摂取量が最大のグループと最小のグループとを比較すると、ビタミンC摂取量が最大のグループは最小のグループに比べて膵臓ガンになるリスクが34%低い(95% CI: 0.58-0.75)という結果でした。
  • 14の症例対照研究だけのデータで同様の分析を行うと、ビタミンC摂取量が多いグループは膵臓ガンのリスクが42%低い(95% CI: 0.52-0.66)という結果でした。
  • 6つコホート研究だけのデータで同様の分析したところ、ビタミンC摂取量が多いグループは膵臓ガンのリスクが7%低い(95% CI: 0.78-1.11)という結果でした。
解説
症例対照研究ではビタミンC摂取量が多いと膵臓ガンになるリスクが低いという強力な関係が認められましたが、出版バイアス(*)や症例対照研究で特に影響が大きいバイアス(†)が影響している可能性があるため数字を鵜呑みにすることはできません。

(*) 否定的な結果となった研究は肯定的な結果となった研究に比べて公表されにくいという偏り(バイアス)のこと。

(†) 被験者の選出において偏りがある、日ごろのビタミンC摂取量のデータを被験者の記憶に依存しているなど。
結論
上記の理由から研究チームは、ビタミンCが膵臓ガンの予防に有効であるとするにはデータが不十分であると結論付けています。