(2015年11月) 肥満者はビタミンDが不足しやすいことが知られていますが、"Nutrition & Metabolism" 誌に掲載された天津医科大学(中国)の研究でも、腹部脂肪が多い人はビタミンDが不足しやすいという結果になりました。 ただし、閉経後の女性はこの限りではありません。
中国の天津市に住む人の中から無作為に選出された20~70才(平均年齢43.8才)の男女 1,105人(女性848人)を対象に、腹部脂肪量とビタミンD(カルシフェジオール)の血中濃度を測定しました。 腹部脂肪量の測定は生体インピーダンス法により行いました。
ビタミンDの血中濃度が20~29μg/Lの場合をビタミンD不足、20μg/L未満の場合をビタミンD欠乏症とみなしました。ビタミンDの血中濃度(日照量に応じて変化する)を調べた時期は不明ですが、11月~12月に健康診断を受けた人の中から被験者を選んだということなので、血液検査をしたのも冬かもしれません。
今回の被験者が1日のうち屋外で過ごす(日光に当たる)平均時間は、男性で1時間、女性で30分でした。26.6%がビタミンD不足、24.89%がビタミンD欠乏症でした。 男性および閉経前の女性では腹部脂肪の量とビタミンD血中濃度との間に統計学的に有意な関係が見られましたが、閉経後の女性では見られませんでした。
そして男性および閉経前の女性に限って、腹部脂肪の量が多いほどビタミンD不足やビタミンD欠乏症のリスクが増加していました。 腹部脂肪の量が最大のグループは最少のグループ(グループ数は全部で4つ)と比べて、ビタミンD不足/欠乏症のリスクが、男性の場合には4.9倍、閉経前の女性の場合には1.8倍でした。 閉経後の女性については統計学的な有意性が認められませんでした。
肥満によりビタミンD不足になるとも、ビタミンDが不足すると太りやすくなるとも考えられています。
肥満によりビタミンD不足(ビタミンD血中濃度が低い)になる理由としては、肥満者に大量に存在する脂肪にビタミンDが閉じ込められて血中に放出されるビタミンDの量が減るためだと考えられていました。
しかし最近の研究では単に、肥満者は脂肪が多いためにビタミンDの濃度が薄まる(ビタミンDが脂肪に蓄えられることは蓄えられるが、そこに閉じ込められて出て来れないわけではない)のだと考えられています。
ビタミンDを大量に投与するとエネルギー消費量が増えることを示す研究(ラットの実験)や、ビタミンDが不足すると脂肪の生成が促進されることを示唆する研究があります。