ビタミンD不足の子供は精神面が不安定になる

(2015年7月) "Journal of Diabetes & Metabolic Disorders" に掲載されたテヘラン大学(イラン)の研究で、ビタミンD不足の子供は精神面が不安定であることが多いという結果になりました。
Ataie-Jafari A, Qorbani M, Heshmat R, Ardalan G, Motlagh ME, Asayesh H, Arzaghi SM, Tajadini MH et al. The association of vitamin D deficiency with psychiatric distress and violence behaviors in Iranian adolescents: the CASPIAN-III study. Journal of Diabetes & Metabolic Disorders 2015, 14:62 doi:10.1186/s40200-015-0191-9 (Licensed under CC BY 4.0)
今回の研究はイランで行われましたが、発展途上国と先進国とで精神障害を患う青少年の率が同程度であることが複数の研究で示されています。
ビタミンDとメンタル・ヘルス

骨の健康にとって大切であることが知られているビタミンDですが、その受容体はニューロンやグリア細胞(神経細胞をあるべき位置に固定して正常な機能を果す手助けをしている細胞)にも存在していますし、ビタミンDの利用に関与する酵素を作り出す遺伝子群は脳にも発現します。 ビタミンDはニューロン形成や神経栄養因子(ニューロンの分化と生存を助ける)の合成にも関与しています。

ビタミンD不足と精神障害の関係を調べた研究は主に成人を対象に行われたものが複数存在します。 例えば、英国の 2013年の研究ではビタミンD3(ビタミンDの中でも主に動物に見られるもの)が不足している中年者には抑鬱・不安感・パニック障害などが見られることが多いという結果になっています。 ただし、ビタミンD血中濃度と抑鬱リスクとのあいだに関係はないという結果になった研究も複数存在します。

研究の方法

イランに住む10~18才(平均年齢14.7才)の子供たち 1,095人を対象に、ビタミンD血中濃度の検査と精神状態(怒り・不安感・抑鬱・睡眠障害・暴力行為など)に関するアンケートを実施しました。

この研究では、ビタミンD(カルシフェジオール)の血中濃度が 10 ng/mL をビタミンD欠乏症、10~30 ng/mL をビタミンD不足としました。

結果

子供たちのうち40%がビタミンD欠乏症で、39%がビタミンD不足でした。 ビタミンDが欠乏あるいは不足しているグループに比べて、ビタミンDが足りているグループでは怒り・不安感・悲しみ/抑鬱を抱えている率が高くなっていました。

種類 不足 欠乏 p値
怒り 1.565 1.806 0.015
不安感 1.728 1.756 0.015
悲しみ/抑鬱 2.355 2.405 0.009
睡眠障害 1.526 1.426 0.021
悩み事 1.808 1.381 0.149

表の解説

表中の「不足」と「欠乏」の数字は、ビタミンDが不足していないグループを1とした場合の倍率です。 したがって例えば「悩み事」の場合、ビタミンDが不足しているグループは悲しみ/抑鬱の率がビタミンDが不足していないグループの1.8倍超ということになります。

表中の数字(睡眠障害を除く)は年齢・性別・居住地域・睡眠時間・社会経済的状態(収入・職業・学歴など)・運動量・母乳育児の期間・BMIなどの要因を考慮した後のものです

睡眠障害と悩み事(worry)に関しては、年齢・性別・居住地域のみを考慮した分析の数字を記載しています。 睡眠時間なども考慮した分析ではp値が 0.258 と 0.149 で、統計学的に有意とは言えない結果でした。

結論
研究チームは次のように結論付けています:
「青少年において、怒り・不安感・睡眠障害・抑鬱・悩み事などの精神的な苦痛とビタミンDとのあいだに関係が見られた。 今回の結果の臨床的な意義は今後の研究課題である」