(2014年5月) これまでの研究で、ビタミンD の不足が喘息の症状に悪影響(喘息の発作回数が増えるなど)を及ぼすことが示唆されていますが、"JAMA" に掲載されたワシントン大学の研究によると、ビタミンD のサプリメントが喘息の症状抑制に有効だが、ビタミンD を飲んでもビタミンD 血中濃度が上がりにくいことがあり、そういう場合には喘息の症状抑制には効果が無いと思われます。
・ビタミンD不足 - 血中濃度が 21~29 ng/ml
被験者を2つのグループに分けて、一方のグループにはビタミンD3のサプリメントを、そしてもう一方にはプラシーボを服用してもらいました。 ビタミンDの投与量は初回が10万IUで、その後は1日あたり 4,000IUでした。
全体的に見ると、①治療不成功(treatment failures)でさらに投薬が必要となる率、②喘息の発作の回数、および③緊急治療が必要となる頻度の3点において両グループに違いは見られず、患者の生活の質(アンケート回答に基づく)も改善していませんでした。
ただし、吸入ステロイド薬の必要量に関しては、ビタミンDを服用したグループで有意に減少していました。 両グループの被験者の症状と相談しながら吸入ステロイド薬の使用量を徐々に減らしていったところ、研究期間が終了する28週間後の時点で、ビタミンDのグループではステロイドを111μg/日まで減らせたのに対して、プラシーボのグループでは126μg/日までしか減らせなかったのです。
研究者は次のように述べています:ビタミンDグループの18%の人も、当初は「欠乏症」だったのが「不足」になったので、サプリメントによってビタミンD血中濃度が増えなかったわけではありません。 しかし、4,000 IU という大量(日本におけるビタミンD摂取上限量の2倍)のビタミンDを服用していたにも関わらず、ビタミンDの血中濃度が適正な水準にまでなっていなかったというわけです。
サプリメント服用にもかかわらずビタミンDの血中濃度が十分に上がっていなかった18%の人を除外したうえで、あらためてプラシーボのグループと比較してみると、ビタミンDのグループ(18%を除外したのちの血中濃度平均は 42 ng/ml)の方が治療不成功でさらに投薬が必要となる率が40%減少し、喘息の発作回数も半分にまで低下していました。
「今回の試験ではビタミンDを大量に服用しても副作用は無いようでしたが。 ただし、ビタミンDサプリメントを長期間にわたって服用する場合の安全性については不明です。
今回の結果から、ビタミンD が不足している喘息患者へのビタミンD投与は有効だと思われますが、ビタミンD投与の効果が出ているかどうかを検査で確認する必要があります」