セロトニンの生産にはビタミンDが必要。 自閉症児への効果も

(2014年2月)Children's Hospital Oakland Research Institute の研究によると、自閉症スペクトラム(ASD)の人に見られる異常な社会行動に対してビタミンD が有効であると考えられます。 この研究で、セロトニン、オキシトシン、バソプレッシンという社会行動に影響がある3つのホルモンがすべてビタミンDにより活性化されることが示されたのです。

これまでの研究でも、セロトニン不足やビタミンD不足と自閉症による異常な社会行動との関係は示されていましたが、その仕組みはわかっていませんでした。

今回の研究

今回の研究では、ビタミンDがトリプトファン水酸化酵素2(TPH2)という酵素を作る遺伝子を活性化させ、これによって脳内においてトリプトファンがセロトニンに変換されることが示されました。 この発見から、脳内でセロトニンが作られるには十分な量のビタミンDが必要であると考えられます。 セロトニンは脳の構造や配線を整え、神経伝達物質として機能し、社会行動に影響を与えます。

この研究ではさらに、トリプトファン水酸化酵素1(TPH1)という酵素を作る遺伝子がビタミンDホルモンによって阻害されることも明らかになりました。 TPH1 は腸などの組織に過剰に存在すると炎症の原因になりますが、TPH1 を作る遺伝子が阻害されることによって、これらの組織におけるセロトニンの生産が停止されます。

今回の発見の意義
これらの発見により、自閉症児に特有の以下の現象の説明がつきます:
  1. 自閉症児では、セロトニンが血流中には多量に存在するのに、脳では不足している。
  2. 自閉症児に女の子よりも男の子が多い。 ⇒ 女の子では、エストロゲンという女性ホルモンにより脳内のセロトニン量が増加し得るため。
  3. 自閉症児は胎児の時点で脳に自己免疫抗体が存在する。 ⇒ ビタミンDが TPH1 の発現を介して制御性T細胞(これがたぶん「自己免疫抗体」を指す)の生産を調整するため。
今回の発見から、ビタミンD、トリプトファン、およびオメガ3脂肪酸(*)を食事から摂取することで脳内のセロトニンの量が増えて、ASDの症状の一部を予防あるいは緩和できる可能性が示唆されます。
(*) 「オメガ3脂肪酸」 という言葉がいきなり登場するので面食らいますが、"The Lancet" 誌(1998年4月)に掲載された Joseph R. Hibbeln 博士の論文で、DHAの血中量が少ない人では脳におけるセロトニンの代謝回転(すでにある物質が分解し、新しく作られた物質に次々と置き替わっていくこと)を示すマーカーの血中量が少ないことが報告されています。