フォルクスワーゲン社の排ガス不正がもたらす被害の規模

(2016年2月) ラドバウド大学(オランダ)の研究チームが、2015年に発覚したフォルクスワーゲン社の排気ガス不正がもたらした被害を推算した結果が "Environmental Pollution" 誌に掲載されています。

不正の規模

米国と欧州において 2009~2015年のうちにフォルクスワーゲン社が販売した違法な(排気ガス量が規制値を超える)ディーゼル車の数は900万台、違法ディーゼル車により排出された窒素酸化物のうち規制値を超えるものは526キロトンにもおよびます。

被害の推算
健康寿命
違法ディーゼル社から規制値を超えて余分に排出される窒素酸化物が原因で健康を損ねたり早死にしたりすることで失われる健康寿命(*)は4万5千年で、その被害の大部分が欧州に集中しています(欧州が4万4千年超で米国は700年ほど)。 欧州の方が販売された不正車の台数が多く人口密度も高いためです。 フォルクスワーゲン社が違法ディーゼル車をリコールしければ、欧州でさらに7万2千年の健康寿命が失われる見込みです。
(*) 病気などで生活の質が落ちることなく健康に過ごせる寿命のこと。
経済的損失
さらに、VSL(後述)と呼ばれる尺度を用いてフォルクスワーゲン社による違法行為がもたらす経済的損失を推算したところ、欧米の合計で390億ドルという数字になりました。 同社が違法車をリコールをしない場合には、さらに620億ドルの経済的損失が発生する見込みです。
フォルクスワーゲン・グループが今回の不正行為に対する補償金として世界全体に向けて用意した金額は73億ドルでしかありません。
VSLについて
VSLは "value of (a) statistical life" の略語です。 VSLとは、資産力と好み(人生において何を優先するか)を考慮したうえで、自分の生命のリスクに対していくら支払うかというものです。 具体的には次のようなケースが考えられます:
  • ~円もらえるなら死ぬ危険が...%の仕事を引き受ける。(例. 危険手当)
  • 死ぬ危険を...%減らせるなら~円を支払ってもよい。 (例. 大病の手術)
今回の話においてVSLは次のような意味になるでしょう:
「違法ディーゼル車の過剰な排気ガスによる健康被害(に起因する早死に)を被らないために支払っても良いと思える金額は、自分の資産力や性格を考慮して~円だ」
そして、今回被害は既に生じているわけですから、今回の話のVSLはフォルクスワーゲン社が及ぼした被害に対して支払うべきであると社会全体が感じている補償金額ということでしょうか。