若い人の血液にアンチエイジングの効果?

(2014年8月) 米国でアルツハイマー病の高齢者に若者の血液(血漿)を投与して症状を改善しようという試験が開始されます。

この試験はマウス実験の結果に基づくもので、これまでのマウス実験では、若いマウスの血液を高齢のマウスに輸血することで高齢マウスの認知能力と複数の臓器の健康が回復し、見た目も若返るという結果が出ています。

これまでのマウス研究
  • 若者の血を若返りに用いるという考えは、吸血鬼伝説を除けば、1950年代にコーネル大学の研究者が提唱したのが最初です。 この研究者が高齢のマウスと若いマウスの血管を接続(異時性並体結合)したところ、高齢マウスの軟骨が予期していた以上に若返ったのです。
  • 続いて 2005年にはスタンフォード大学の研究者が、異時性並体結合により高齢マウスの肝臓と骨格幹細胞が若返り、筋肉の修復力も若者並みになることを示しました。 その一方で、異時性並体結合をされた若者マウスでは老化が加速しているようでした。 筋肉の修復力が年齢に比して衰えていたのです。
  • 2012年にはハーバード大学の研究グループが、若者マウスの血によって高齢マウスの心臓を若返らせることに成功しています。 心肥大(心臓が肥大する)を患っている高齢マウスと若く健康なマウスの血管を接合してから4週間後に、高齢マウスの心肥大が治ったのです。 この実験では、若いマウスへの悪影響は見られず、心臓のサイズにも変化はありませんでした。

    異時性並体結合によって心臓が若返ったのは、血漿(血液から血球を除いた液体成分。 タンパク質・無機塩類・糖分・脂肪・窒素化合物・老廃物・ホルモン・抗体などを含む)に含まれる増殖分化因子11(GDF11)というタンパク質によるものでした。 ヒトでもマウスでも GDF11 は加齢に従って減ってゆきます。

    若返りの効果が GDF11 によるものであることは、心肥大の高齢マウスに GDF11 を30日間にわたって投与するという実験により確認されました。 GDF11 の投与で、異時性並体結合と同程度の効果が得られたのです。

    その翌年にもハーバード大学の研究グループは、GDF11 を高齢マウスに毎日注射することで、脳における血管と幹細胞の数が増加するという研究結果を発表しました。 血管の数と幹細胞の数が増加すると、脳機能が改善されます。
  • 2014年に発表されたスタンフォード大学の研究では、若いマウスの血漿を高齢マウスに注射することで、高齢マウスの持久力と認知能力が改善されるという結果になっています。

    さらに、このスタンフォード大学の研究グループ(2005年とは別の研究者)は、ヒトの若者の血液を高齢マウスに注射するという実験を行い、ヒトの血液による若返り効果を確認しています。
今度の研究

そして今秋いよいよ、ヒトの若者の血液をヒトの高齢者に注射するという試験が行われることになっています。 10月上旬にスタンフォード大学において、30才未満の人から採取した血漿が軽~中等度のアルツハイマー病患者に輸血される予定です。

ヒトの血液をヒトに注射するという実験の許可は、すでに輸血が幅広く行われていることもあって、容易に得ることができました。

ただし研究者は、家庭で(例えば孫の血を祖父に)輸血するのは危険だと警告しています。 輸血には血液型の問題がありますし、病気の有無を検査したり、血漿を分離したりする必要もあるためです。 吸血鬼のように血を飲むのも論外です。

研究グループは、若者の血がもたらす若返り効果は GDF11 のみによるものではなく、若者の血に含まれる複数の成分が合わさって効果を発揮するのだと考えています。

最終的には、若者の血に含まれる有効成分を GDF11 同様に特定して、それをベースに薬の開発を目指す予定です。