高血圧に真武湯が効くかどうかは現時点では不明

(2015年12月) "*BMJ Open*" に掲載された中国中医科学院のシステマティック・レビューによると、真武湯という漢方薬が高血圧に効くかどうかを判断するには現時点ではデータ不足です。
Xingjiang Xiong, Pengqian Wang, Shengjie Li. Meta-analysis of the effectiveness of traditional Chinese herbal formula Zhen Wu Decoction for the treatment of hypertension. BMJ Open 2015;5:e007291 doi:10.1136/bmjopen-2014-007291 (Licensed under CC BY 4.0)
真武湯

真武湯は 1800年ほど前に、後漢の官僚にして医師であり「傷寒論」の著者としても知られる張仲景が考案した漢方薬で、その成分は附子(ぶし)・茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)・白芍(びゃくしゃく)・生姜(しょうきょう)という5種類の生薬です。

張仲景が残した文献によると、真武湯には腎臓における陰虚と体液貯留を改善する効果が期待できます。 陰虚と体液貯留症候群はいずれも中国医学における高血圧の一般的な症候群で、その症状は次のようなものです:
寒がり・手足の冷え・虚弱感・疲労感・立ちくらみ・耳鳴り・水分欲求を伴わない喉の渇き・胸部不快感・動悸・胃腸の膨満感・食欲不振・腰や脚が重い感じ・むくみ・日中の眠気・排尿障害・脂ぎった舌苔を伴う舌の腫れ・弱く遅く深い(*)
(*) 「深い脈」とは、脈を測るときに強く抑えないと感じ取れない脈のこと。
レビューの方法

真武湯の高血圧への効果を調べたのランダム化比較試験のうち 2014年11月までに行われたものの中から所定の基準を満たす7つの試験を選出し、それらのデータを分析しました。 試験の内容は、真武湯と降圧剤とで降圧効果を比較するというものでした。 高血圧患者の数は7つの試験の合計で472人でした。

結果
降圧剤と真武湯との比較

降圧剤と真武湯との比較では高血圧症のリスクに関して統計学的に有意な違いは見られませんでした(*)。 降圧剤に比べて真武湯の降圧効果が優れてはいないということになります。

降圧剤と真武湯+降圧剤との比較
降圧剤のみの効果と真武湯+降圧剤とで効果の比較では、高血圧症のリスク(*)・収縮期血圧(†)・拡張期血圧(‡)のいずれにおいても真武湯の併用が高血圧に有効でした。 真武湯との併用により降圧剤の効果が向上する可能性があります。

(*) n=215; RR 1.21, 95% CI 1.08 to 1.37; p=0.001

(†) n=80; WMD -14.00 mm Hg, 95% CI -18.84 to -9.16 mm Hg; p<0.00001

(‡) n=80; WMD -8.00 mm Hg, 95% CI -11.35 to -4.65 mm Hg; p<0.00001

"wmd" は "weighted average differences" の頭字語で「加重平均値の差」という意味。

中国医学的な見地における効果
中国医学における症状および症候群(*)は、真武湯のみ(†)でも真武湯+降圧剤(‡)でも改善していました。 中国医学的な症状の改善に関しては、真武湯が単体でも降圧剤との併用でも有効かもしれません。

(*) "traditional Chinese medicine symptoms and syndromes" を訳したもの。 この言葉は論文中に説明がありませんが、冒頭の真武湯の説明のところに記載した腎臓における陰の欠乏と体液貯留の症状である「寒がり・手足の冷え・虚弱感...」などのことでしょう。

(†) n=177; RR 1.58, 95% CI 1.28 to 1.95; p<0.0001

(‡) n=215; RR 1.30, 95% CI 1.14 to 1.49; p=0.0001
副作用

7つの試験のうちに副作用の有無について調べたものはありませんでした。 したがって、真武湯を高血圧の治療に用いる場合の安全性は不明です。

結論
高血圧の真武湯に対する効果に関してこれまでに行われた研究の信頼性が低いため、真武湯の高血圧への効果に関して明確な結論を出すことはできません。 特に真武湯の連続血圧(24時間血圧計により昼夜を通して測定する血圧)への効果と真武湯の副作用に関して、今後の高品質な研究で確認する必要があります。