真武湯は 1800年ほど前に、後漢の官僚にして医師であり「傷寒論」の著者としても知られる張仲景が考案した漢方薬で、その成分は附子(ぶし)・茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)・白芍(びゃくしゃく)・生姜(しょうきょう)という5種類の生薬です。
張仲景が残した文献によると、真武湯には腎臓における陰虚と体液貯留を改善する効果が期待できます。 陰虚と体液貯留症候群はいずれも中国医学における高血圧の一般的な症候群で、その症状は次のようなものです:真武湯の高血圧への効果を調べたのランダム化比較試験のうち 2014年11月までに行われたものの中から所定の基準を満たす7つの試験を選出し、それらのデータを分析しました。 試験の内容は、真武湯と降圧剤とで降圧効果を比較するというものでした。 高血圧患者の数は7つの試験の合計で472人でした。
降圧剤と真武湯との比較では高血圧症のリスクに関して統計学的に有意な違いは見られませんでした(*)。 降圧剤に比べて真武湯の降圧効果が優れてはいないということになります。
(*) n=215; RR 1.21, 95% CI 1.08 to 1.37; p=0.001
(†) n=80; WMD -14.00 mm Hg, 95% CI -18.84 to -9.16 mm Hg; p<0.00001
(‡) n=80; WMD -8.00 mm Hg, 95% CI -11.35 to -4.65 mm Hg; p<0.00001
"wmd" は "weighted average differences" の頭字語で「加重平均値の差」という意味。(*) "traditional Chinese medicine symptoms and syndromes" を訳したもの。 この言葉は論文中に説明がありませんが、冒頭の真武湯の説明のところに記載した腎臓における陰の欠乏と体液貯留の症状である「寒がり・手足の冷え・虚弱感...」などのことでしょう。
(†) n=177; RR 1.58, 95% CI 1.28 to 1.95; p<0.0001
(‡) n=215; RR 1.30, 95% CI 1.14 to 1.49; p=0.00017つの試験のうちに副作用の有無について調べたものはありませんでした。 したがって、真武湯を高血圧の治療に用いる場合の安全性は不明です。