ジカ熱の原因ウイルスは蚊の卵を経て次世代の蚊へと受け継がれる

(2016年8月) "American Journal of Tropical Medicine and Hygiene" に掲載されたテキサス大学の研究により、ジカ熱を引き起こすジカ・ウイルスがメスの熱帯シマ蚊からその卵へと感染(垂直感染)することが明らかになりました。 蚊が媒介するジカ熱などのウイルスが熱帯地域の乾季を乗り越えて蚊に媒介され続けるのも、このためだと考えられます。

垂直感染の実際

実験では、290匹につき1匹の割合でジカ・ウイルスが卵を経て次世代の蚊の成体にまで引き継がれました。 この割合は非常に低いものに思えますが、熱帯地域にはおびただしい数の蚊がいるので、ジカ・ウイルスが世代をまたいで引き継がれるには十分な数字だと思われます。

ただし、自然環境では実験環境と違ってジカ・ウイルスの垂直感染が生じないという可能性もあるので、今後の研究で、自然環境で育ったボウフラを採集してジカ・ウイルスの垂直感染が生じていることを確認する必要があります。

今回の発見の意味

自然環境でもジカ・ウイルスの垂直感染が発生しているとすれば、蚊の卵やボウフラには殺虫剤の噴霧はほとんど効果が無いため、ジカ熱対策の一環としてボウフラを殺すための薬剤も利用する必要性が強まります。

現在生じているジカ熱の感染は熱帯シマ蚊(Aedes aegypti)によるもので、それゆえに感染者は主に熱帯地域で発生していますが、熱帯シマ蚊はその生息範囲を北方にまで拡大しつつあります。 数日前にも、香港でもジカ熱に感染した人が出たというニュースが出ていました。参考記事: ジカ熱流行リスクの世界地図

日本に住むシマ蚊(Aedes albopictus)もジカ熱を媒介するので、ジカ熱はそう遠くないうちに日本にとっても他人事ではなくなるでしょう。

垂直感染する他のウイルス
デング熱や黄熱などの原因ウイルスも、熱帯シマ蚊で垂直感染します。 また、イエカ属の蚊では西ナイル熱やセントルイス脳炎の原因ウイルスが垂直感染します。