妊娠前の亜鉛不足により流産・死産が増え、胎児の発達が妨げられる可能性

(2014年5月) "Biology of Reproduction" 誌に掲載された米国の研究によると、妊娠前の時点で十分に亜鉛を摂っておく必要があるかもしれません。 この研究で行われたマウス実験において、妊娠前の短期間に亜鉛を含まないエサを与えられた雌マウスでは、受胎時および妊娠中に問題が生じて胎児が発育不全となったのです。

実験の概要

実験では、雌マウスの妊娠前の4~6日間にわたって亜鉛が欠乏しているエサを与え、妊娠3日目・6日目・10日目・12日目・16日目における胎芽(ヒトで言えば受胎後8週以内の胎児)と胎盤(プラセンタ)の発達状況を、光学顕微鏡検査と磁気共鳴映像(MRI)を用いて、普通のエサを与えた雌マウスとで比較しました。

妊娠前の亜鉛の欠乏は、マウスの生殖機能に顕著な影響を及ぼしていました。 亜鉛が欠乏しているエサを与えられたグループで以下が確認されました:
  • 流産・死産の発生率が増加していた。
  • 胎芽も通常より平均で38%小さいサイズにしか成長していなかった。
  • およそ半分の胎芽に、発達の遅れや異常が見られた。
  • 胎盤の胎児に面した側の発達が随分と少なかった。
解説

胎盤の発達異常は、胎芽/胎児の発達の遅れの主因となります。 胎盤に異常があると、胎芽が成長に必要な栄養を十分に受け取れないためです。

今回の結果からヒトにおいても、生殖機能を適正に保ち、胎芽/胎児および胎盤の正常な発達を促進するために、妊娠前に亜鉛を十分に摂っておく必要があると考えられます。

研究者は次のように述べています:

「今回の結果から、妊娠前に短期的に栄養不足になるだけでも、卵子や、胎芽、胎盤の質に悪影響があると考えられます」

「妊娠前の女性には葉酸(ビタミンB の一種)が処方されますが、妊娠前の時点で十分に摂取しておく必要があるという点から言えば亜鉛も葉酸と変わりません。 妊娠してからサプリメントなどで亜鉛の摂取量を増やしても手遅れなのです。

亜鉛は妊娠中にも大切ですが、妊娠前の亜鉛不足のために生じた卵子の発達異常に関しては、妊娠後に亜鉛摂取量を増やしてもどうにもなりません」
女性の亜鉛所要量はカルシウムや鉄ほど多くはありませんが、人体において亜鉛はすぐに代謝されてしまうため毎日こまめに補給する必要があります。
「複数の動物実験で、体の部分によっては亜鉛欠乏症がわずか数日間で生じることが示されています。 今回のマウスでもかなり速やかに亜鉛欠乏状態となりました」
亜鉛は、肉類、魚介類、牛乳などの動物性食品に豊富に含まれています。 果物や野菜にはあまり含まれていません。