亜鉛の必要性

(2014年7月) "Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety" 誌に掲載された論文によると、亜鉛は人体にとって最も重要な微量必須元素の1つです。 人体の様々な生理的プロセスで必要とされるだけでなく、多くの病気を予防する効果を持つ薬でもあるのです。

亜鉛について

成人の体に含まれる亜鉛の量は2~3gで、臓器・体組織・骨・体液・細胞に存在しています。 亜鉛の供給源はタンパク質、特に動物性のタンパク質です。 人類の半数近くが亜鉛不足だと言われています。

論文の概要
この論文によると、亜鉛の人体への効果を調べた研究には次のようなものがあります:

  • アルツハイマー病やパーキンソン病の患者では亜鉛の血中量が不足する傾向があります(Brewer 他, 2010)。 最近の研究に、亜鉛に抗鬱剤のような作用があることが観測されています(Nowak 他, 2005)。
  • 心臓・血管
    亜鉛は動脈の血圧調整おいて特筆に価する役割を果たしています。 高血圧患者においては、男性と女性とで亜鉛の代謝のし方が異なることが報告されています(Tubek, 2007)。
  • 肝臓
    肝硬変にまでは至っていないアルコール性/非アルコール性肝臓疾患の患者でも肝臓で亜鉛が欠乏することがあります(Bode 他, 1998)。
  • 妊娠
    妊娠中に亜鉛欠乏症になると、欠乏症が軽度であっても、母体において死亡率、味覚異常、遅産、分娩効率の低下(inefficient labor)、弛緩出血(出産後の子宮収縮不良による出血)のリスクが増加し、胎児へのリスクも増加します(Jameson, 1993)。 参考記事: 妊娠前の亜鉛不足により流産・死産が増え、胎児の発達が妨げられる可能性
  • 糖尿病
    亜鉛はインスリンの合成、貯蓄、分泌において非常に重要となります(Chausmer, 1998)。 亜鉛不足は、①糖尿病患者における冠状動脈疾患などの合併症、および②高血圧や中性脂肪増加などの糖尿病のリスク要因に関与しています(Singh 他, 1998)。 (亜鉛が不足すると糖尿病になるリスクが増え、すでに糖尿病の人では合併症が起こるリスクが増加するということでしょう)
  • 内分泌系
    複数の研究により、①老人病の患者で亜鉛が欠乏している傾向があることや参考記事: 亜鉛不足は万病のもと、②亜鉛欠乏により胸腺および胸腺ホルモンの活性が衰えること、③亜鉛欠乏により予防接種の効果が減少すること、④亜鉛欠乏により免疫力が衰えることが示されています(Haase and Rink, 2009)。
  • 傷の治癒
    亜鉛の欠乏により傷の治癒が遅くなると考えられます。 また亜鉛は、胃潰瘍(特に初期のもの)の治癒にとって非常に重要です(Kennan and Morris, 1993; Andrews and Gallagher-Allred, 1999; Watanabe, 1995)。
  • 肺炎
    亜鉛の服用によって重症肺炎が治るまでの期間と入院期間が短縮される可能性があります(Brooks, 2004)。