加齢による慢性炎症に亜鉛の欠乏が関与

(2015年3月) "Molecular Nutrition & Food Research" 誌に掲載されたオレゴン州立大学の研究(*)によると、加齢による慢性炎症に亜鉛の欠乏が関与している可能性があります。 心血管疾患(心臓病や脳卒中)・ガン・糖尿病などの慢性病には炎症が関与していますが、その炎症の一因が亜鉛の欠乏かもしれないのです。
(*) Wong, C. P., Rinaldi, N. A. and Ho, E. (2015), Zinc deficiency enhanced inflammatory response by increasing immune cell activation and inducing IL6 promoter demethylation. Mol. Nutr. Food Res.. doi: 10.1002/mnfr.201400761
研究の内容

研究チームはまず、細胞実験において亜鉛の欠乏により細胞の炎症反応が増加することを確認しました。 亜鉛を減らすことによって免疫細胞が異常な活性を示し、サイトカイン(細胞間のシグナル伝達に関わるタンパク質)の一種で炎症に関与しているIL-6(インターロイキン6)の調節不全が引き起こされたのです。

老若のマウスを用いた実験では、高齢のマウスでは亜鉛が不足しており、それに対応するかのようにIL-6のメチル化が減少して慢性炎症が増加していました。 ヒトの免疫細胞でも、高齢者ではIL-6のメチル化が減少していることが確認されました。
メチル化
メチル化は細胞が遺伝子の発現をコントロールするのに用いる後成的なメカニズムです。 後成的とは、食事や環境などの後天的な要因が遺伝子に影響して、遺伝子の発現のパターンが変わることを言います。 遺伝子の発現というのは遺伝子の設計図に基づいて体内でタンパク質が作られることです。
したがって、「IL-6のメチル化が減少する」というのは、IL-6の生産にブレーキがかからない(そして、そのために炎症が増加する)ということでしょう。
これらの結果から、高齢者における炎症の増加に亜鉛の欠乏が関与している可能性が示唆されます。
実用性

現在のガイドラインでは、亜鉛の推奨摂取量が10代の頃をピークとしてその後減少していくように定められていますが、今回の研究によると高齢者で推奨摂取量を増やすようにガイドラインを変更する必要があるかもしれません。

亜鉛について

亜鉛は人体の成長や、発達、神経機能、免疫など様々な面で必要とされる微量必須元素です。 高齢者は亜鉛の利用効率が衰えるうえに、亜鉛を豊富に含む肉類や貝類(牡蠣に特に多く含まれる)の摂取量が少ないために亜鉛不足になりがちです。

亜鉛は体内に一度に蓄えられる量が少ないため、定期的に摂取することが大切です。