亜鉛不足により亜鉛不足が悪化するおそれ

(2015年12月) "Nutrients" 誌に掲載された米国の研究によると、亜鉛の不足が腸内細菌を介してさらなる亜鉛不足を招く可能性があります。

腸内細菌と健康
腸内細菌はこれまでの研究により、肥満・抑鬱・糖尿病・心臓病のリスクに関与していることが示されています。 また、宿主(ヒトなどの動物)が食べた食事から腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸(SCFA)は人体に有益な作用をもたらします。
研究の方法

鶏(今回の研究で重要となる部分においてヒトに似ている)を2つのグループに分けて、一方のグループには亜鉛を十分に含むエサを与え、もう一方には亜鉛が不足しているエサを与えました。 そして、2つのグループの糞のサンプルを収集して、糞に含まれる微生物のDNAを抽出・分析しました。

結果

亜鉛不足のグループでは、腸内細菌の多様性が損なわれ、細菌の活性が低下し、重要なSCFAの濃度が低下していました。

解説

人や鶏だけでなく多くの細菌にとっても亜鉛は必須ミネラルであることから、亜鉛が不足した環境においては亜鉛の欠乏に耐えられる種類の細菌ばかりが繁栄し、その結果、腸内細菌の多様性が低下したのだと思われます。

亜鉛不足で衰退する菌と繁栄する菌

亜鉛の欠乏に耐えられる細菌は亜鉛が存在しなくても生きていける細菌だというわけではありません。 亜鉛の利用効率に優れる腸内細菌(プロテオバクテリア門の細菌など)が亜鉛不足の環境に適応して繁栄するのだと考えられます。 その一方で、SCFAの生産能力に優れるファーミキューテス門の細菌(クロストリジウム菌など)は亜鉛不足の環境に適応できずに数が減ってしまうと思われます。

SCFAにはプロテオバクテリア門の細菌の増殖を抑制する作用があるので、亜鉛不足によるファーミキューテス門の細菌の減少もプロテオバクテリア門の細菌の繁栄に拍車をかけている可能性があります。

亜鉛不足の悪化

一部の腸内細菌はビタミンやミネラルの獲得において宿主と競合関係にありますが、亜鉛の利用効率に優れるプロテオバクテリア門などの腸内細菌も宿主が利用すべき亜鉛を奪って宿主の亜鉛不足を促進する恐れがあります。

また、SCFAには腸内の酸性度を強めて消化やミネラル(特に鉄と亜鉛)の溶解を促進する作用があるため、SCFAを作り出す腸内細菌の減少によるSCFA減少によって亜鉛の吸収率が低下する可能性があります。